学校や保育園・幼稚園の先生方への「医療的ケア」に関する研修は様々な内容が各地で実施されています。
今回は医療的ケア児が利用している訪問診療クリニックの看護師さんが、保育園に出向いて先生方のための実技研修を実施しておられる様子を見学させていただきました。
練習用のお人形を持参しての実技研修です
研修の様子を見学させていただいた保育園で働く看護師さんは主治医からの説明や確認等は別の機会に設定されたとの事で、今回の研修の目的は保育園の先生方にケアの内容や、緊急時の対応を理解していただく、という事になっていました。
気管カニューレとはどういうものか？の部分から理解をしていただくために、訪問診療クリニックの看護師さんが練習用のお人形や気管カニューレを保育園に持参していました。
担任の先生だけでなく他にも関わる先生方や園長先生が、お人形の周りに集まって看護師さんの説明を聞いておられました。
また、実際に練習用の気管カニューレを全員で触ったり、お人形の気管孔に再挿入する体験もしておられました。
これはあくまでも緊急時での対応という事で、保育園の看護師さんと先生方とで具体的な動きなども話し合いながら、順番に体験をしておられました。
先生方からも色々質問がありました
保育園の先生方が練習用人形で体験される目的は、医療的ケアの内容や状態について理解を深める事と、緊急時にも落ち着いて看護師と連携できる事、です。
人形を囲んで色々な質問やご意見が活発に出ていました。
「緊急事態が教室で起きるとは限らないよね…」とか「○○ちゃん（医ケア児）の緊急時は他の子ども達の対応もイメージしておかないといけないね…」などなど先生方と看護師さんは具体的に話し合っておられました。
そして保育園で働く看護師さんは、訪問診療クリニックの看護師さんに指示書の記載事項や保育園への持参物品の事など、看護師同士で細かい内容の確認や情報交換をしていました。
全部で１時間ほどの研修でしたが、別のお部屋におられた先生方も、研修が始まったらサッとお人形の横に来られ体験をして研修が終わったらサッと解散ができていて、短時間であってもとても中身が濃い研修だなと感じました。
訪問診療クリニックの看護師として担当する患者さんのための研修を実施しておられるのですが、その看護師さんが実施する研修は医療的ケア児と保護者さんとの継続した関わりの流れの中で、その子の成長とともに新しく関わる人達にその子がその子らしく成長できるように、段差があればそこに「そ～っとスロープをかける」ようなアットホームな雰囲気の研修でした。
まとめ
訪問診療クリニック所の看護師さんは今までもこれからもその子と保護者さんに関わる存在です。
医療的ケア児に限らずどの子も成長とともに関わる人が増え、新しい環境に触れて、行動範囲が広がっていき「社会」と繋がっていきます。
医療的ケア児については「関わる人」の中に医療職や福祉職も入るわけですが、新しい人や始めての環境に触れる時に感じる（あるいは生じる）段差について、医療職や福祉職がかえって段差を大きくしてしまったり複雑にしてしまったりしないようにそ～っとスロープをかけながらその子を「社会」に送り出していけるような「関わる人同士の連携プレー」ができれば理想的だな～と、今回の保育園での研修を見学しながら感じました。
今回出会った訪問診療クリニックの看護師さんはその子らしい成長について、先の方までを見通しながら自分の役割は「裏方」というイメージで看護を実践しておられるというお話を聞かせてくださいました。
これはまさに「学びを支える看護」を実践する学校の看護師と共通したマインドだと思います。
こういった同じ地域で働く地元の看護師同士が連携する事は医療的ケア児の成長にはとても大切な事だと実感しました。
