今回は小学校で働く看護師さん、そして中学校で働く看護師さんに、別々にお話を伺う機会がありました。それぞれ地域が異なるのですが、お二人とも子どもの自立(セルフケア)について取り組んでいました。
子ども自身が自分のケアが実施できるように取り組む中で、なかなかやる気になってくれない時でも根気強く、様々な工夫をしながら、子どもが少しでもやる気になってくれるように配慮をしておられるのはスゴいな、と思いました。
中学生のAさん
中学生のAさんとその看護師さんとは小学校の時からの関わりとの事で、看護師さんはAさんの成長をずーっと見てきたそうです。Aさんのケアの手順については、ほぼ確立していて、看護師としては安心して見ていられるところまでになっているそうです。これはもちろん学校だけでできる事ではなくて、家庭としっかりと連携してこられたからこそ、Aさんのケアが自立できたと思います。
私からもう少し突っ込んで「Aさん自ら看護師に対して、今日の体調や、痰の性状など(自己排痰)についての発信はありますか?」と質問させていただきました。
「そういえばいつも看護師の方から声をかけているので、Aさんから先に教えてくれるという事はないですね…」との事でした。
看護師としては、状態を観察し情報を収集する事は当然重要な事なので、Aさんの状態を把握しようと、看護師の方から先にAさんに質問をする、という事は何も間違ってはいません。ただ、Aさん自身の自立という事をイメージした時に、Aさん自身が自分のコンディションに関心を持って、大事な事は周囲の人に自分から発信できる、という力もついている、というところまでAさんが成長すると理想的だな~と感じました。
もちろん、Aさんは既に自分の体調についてはちゃんと捉えている可能性もありますが、学校では看護師から先に質問する事が当たり前になってしまっているとしたら、自分で発信する事の必要性が感じられなくなってしまう可能性もあるかな、と思いました。
看護師としては、速やかに情報収集がしたくなるところではありますが、可能であれば担任の先生とも相談し、今後の進路選択も視野に入れた子どものセルフケアの確立という観点では、看護師から先に質問するのをグッと待ってみて、Aさん自身に考える時間を作ってあげる事も方法のひとつかな、と思いました。
小学生のBさん
小学生のBさんについては、学校での看護師さんの関わりが始まってまだ1年未満という事でした。既に家庭でも自己導尿の練習を開始しておられるとの事で、今は学校のトイレでの練習を開始するタイミングを担任と保護者さんとで相談中という状況でした。
そして、学校ではBさんの気持ちについても、担任と看護師や養護教諭の先生とで丁寧に配慮して関わっておられました。どこのトイレを使うか?や、どんな声かけでトイレに誘導するか、と言った事についても慎重に話し合いながら進めてきたそうです。
お話を聞かせてくださった看護師さんは、子ども自身に自分の体調について関心を持ってもらいたいという思いで、尿量についても、いつもより多いかな、少ないかな、というような話をBさん自身とするように意識しているそうです。最近では、Bさんの方から、尿量が少ない時には「水筒のお茶を飲まなきゃいけないね」と自分から発言してくれるようになったと聞かせてくださいました。
これは確実にBさん自身が成長をしている、という事だと思います。家庭での関わりとは異なる、学校教育の中で教員と看護師が連携して子どもの自立に向けた取り組みの成果です。本当にスゴい事だな〜だと感じました💕
まとめ
学校で働く看護師は、特別支援学校でも小中学校でも、どの看護師さんも子ども達に声をかけながら丁寧に子ども達との関係性を構築して学校での看護を実践しています。
子どもが、自分で自分のケアができるようになる取り組みの中でも、看護師は担任の先生と連携しながら、子どもの性格やペースにも配慮しつつ、その子なりのセルフケアの確立を目指して関わっています。
子ども自身が自分の今日のコンディションを支援者に発信できる力が付くだけでも、立派なセルフケアの確立に向かっているなあ、と思いながら、医療的ケア児に丁寧に関わっておられるお二人の看護師さんのお話を聞かせていただきました。