今回は中学校で勤務しているベテランの看護師さんと意見交換ができました。その方は、担当している医療的ケア児が小学校の1年生の時から関わってこられたとの事で、今は中学2年生なので、その生徒さんとは8年間の歴史があるそうです。
中学生に成長した医療的ケア児と看護師との距離感について、小学校の時とは違いを感じる場面や、医療的ケア児の周りの生徒の成長が感じられる場面など、小学校で勤務していた時とは異なる、中学校ならではのお話を聞かせていただくことができました。
その子の成長を感じ嬉しい反面、関わり方に悩む事もあります
「中学生に成長し中学校での生活にしっかりと取り組んでいる様子を見ると、看護師としてAくんに(担当する医療的ケア児)関われた事の意義を自分自身感じるし、本当に嬉しい」と、8年間の関わりを振り返ってお話してくださいました。
「中学生になってから、Aくんと廊下ですれ違っても看護師には知らないふり?をする事もあったりして、最初はビックリしました。でも、ケアの時間にはいつも通りに看護師のところに来て、今まで通りに色々な事を看護師に話してくれます。周りに他の子がいる時といない時では態度を変えているのだろうと思い、これも本人の成長なんだな~と感じています」との事です。
お話を伺う中で、私も「Aくんの気持ち」について色々考えつつ、看護師の心情としては、8年間もの長い時間を一緒に過ごしてきた事が、おそらく、子どもを持つ母親が感じるような「子どもの成長が嬉しいような、寂しいような、複雑な気持ち」に似たような心情もあるかな?と私は感じました。
「彼なりに何かに悩んでいたり、不安になったりしている事もあるんだな、と感じる場面もあります。私(看護師)を信頼してくれているから話してくれるんだなと思うと嬉しいです」とおっしゃっておられました。
当たり前の事ですが、医療的ケア児も年齢とともに、心も体も成長していきます。もちろん、子ども毎に違いがありますが、心の成長の部分でも、当然思春期らしい変化もあると思います。周りの人達との関係性や、自分は他者からどう見られているのだろうか、というような事も強く意識し始めるのは、中学生としては当然の事ではないかと思います。
そういった医療的ケア児の心の成長や変化を、中学校においても小学校の時と同様に担任と共有する事は、とても大事な事だと思います。「看護師だけど中学生に関わる大人としてどのように関わればいいのか悩む事もある」とその看護師さんもおっしゃっておられました。そういった時は担任と共有し、思春期の子どもへの関わり方について、中学校の先生方の専門性を教えていただきながら、中学生らしい学校生活が送れるよう、看護師として医療的ケア児の学生生活をサポートしていくのが、思春期を迎えた医療的ケア児への学校での看護には必要な観点だと思います。
医療的ケア児だけでなく、周りの生徒さんたちも看護師を見ています
「担当するAくんと同じ小学校から、この中学校に進学して来た子ども達は、私が看護師だとわかっています。私に話しかけてくる子もいるし、女子生徒さんの中には、自分の中で整理できない感じのモヤモヤした気持ちを私に話してくれる子もいます」とおっしゃっておられました。医療的ケア児の周りにいる子ども達は、看護師が何のために学校にいるのか?についてキチンと理解しています。「この人は看護師という仕事をしている人なんだ」という目で見ているわけです。
私も随分前の事にはなりますが、中学校の行事の時に、特別支援学級の医療的ケア児の近くにいた、通常学級の女子生徒が「看護師になるにはどうすればいいの?」と私に話しかけてきてくれた、という経験があります。確かその時は、看護師がケアを実施している様子を少し離れたところからその女子生徒さんが見ていて、看護師のケアが終わったタイミングで、私に話しかけて来た、という感じでした。私はその生徒さんがそういう質問を直接看護師にしてくれた事がめちゃくちゃ嬉しくて、「ぜひ看護師さんになって欲しいわ~」とその生徒さんの隣にいた子も含めて、看護師の宣伝をしてしまいました。後から考えると、おそらくその時の女子生徒さん達は、「ちょっと聞いただけなのに💦」と思ってかも❓とも思います。
中学生になると医療的ケア児の周りの子ども達は「看護師」を「看護師という職業をしている人」として見ているんだ、とその時の私は理解しました。中には、小学生であっても「私(僕)のお母さんも看護師さんなんだよ~」と誇らしそうな表情で教えてくれる子もいました。学校の中で「看護師」として働いているという事は、「自分のお母さんと同じ仕事をしている人」と捉えている子や、「将来の職業の選択肢のひとつ」として捉える子もいる、という事だと思います。看護師が学校で働く姿を子ども達が見ている、という状況は、大げさにいうと「キャリア教育」のひとつにもなっている‼️とも思います。
まとめ
義務教育は中学生で終了し、卒業後の子ども達の進路もそれぞれの道に分かれていきます。当然医療的ケア児も同様です。
学校では担任の指導により、医療的ケア児だけなく、どの子ども達にも世の中で「生き抜いて行く力」をつける指導が行われています。医療的ケア児については、その指導を看護師も職員のひとりとして支える事で、子ども達の心身の成長が促されていきます。当然、子ども達の心の成長に伴い、看護師と医療的ケア児との距離感も変化していくと思います。中学校では中学生らしい学びができるよう、中学校で働く看護師は、担任の先生方との連携がとても大事なポイントになるとあらためて感じました。
そして、将来もしかすると、中学生の時に学校で働いていた看護師さんを見た事が「看護師を目指すきっかけになりました‼️」と言ってくれる未来の看護師さんが出てきたらいいな~と思います💕