前回はオンラインでの開催だった日本小児看護学会学術集会が、今回は福岡国際会議場で開催されました。私自身は発表の予定はありませんでしたが、久しぶりの会場での開催なので、情報収集の目的で福岡まで行ってきました!
医療的ケアに関する看護研究やテーマセッションもあります
日本小児看護学会では、以前から学校における医療的ケアについての政策提言を出している学会という事もあり、数ある看護系の学会の中では、医療的ケア児に関する研究やセッションが多く取り上げられている学会です。
日本小児看護学会ホームページ👉https://jschn.or.jp/
【政策提言】医療的ケアを必要とする子どもへの支援における特別支援学校等での看護師のあり方についての提言
👉https://jschn.or.jp/files/20120528_iryocareteigen.pdf
今回のプログラムの中にも、病院から在宅への移行や、保育所や学校での医療的ケアに関する研究やセッションが複数ありました。
会場内のあちこちで同時に、たくさんの発表が行われますので、もちろん、それら全てを聴く事はできませんでしたが、いくつか、関心のある研究やセッションを聴かせていただく事ができました。(参加者は後からアーカイブ視聴もできるので、後からでも気になった発表は見る事が出来るんです。便利ですね~)
医療的ケア児の色々な場面での生活の場を支える看護師の役割
今回聴かせていただいたご発表はどれも、各方面で活躍中の方々の研究で、最先端の内容ですから、非常に勉強になりました。私は、大きく二つの点が印象に残りました。
ひとつめは、多くの看護師が、病院や大学だけでなく、医療的ケア児が病院を退院した後の色々な生活の場でも働いているんだな、という実感を持った事 です。
ふたつめは、「学校」というところについては、何らかの「段差」や「やりにくさ」のようなものを、医療的ケア児に関わっている看護師は感じているようだな、ということがわかった事 です。
ザックリとした印象ではありますが、医療的ケア児のレスパイト入院も含めて、子ども達の色々な場面で生活を支える、様々な立場の看護師の方々のご発表が聴けた事により、ここ数年で看護師のニーズが多様化していて、その事により、看護師の働く場所や看護の目的自体もかなり多様化している、という印象を持ちました。
この多様な看護師が働く場所の中には、当然、「学校」も含まれています。私は、つながるかい の皆さんとのやり取りや、実際に学校を訪問して、そこで働いている看護師の方々と話す中で、学校における看護師の役割について何度も考えます。
学校の看護師に求められる役割は「看護」なのか?「介護」なのか?あるいは「教育」なのか?「療育」なのか?といったところは、どのように捉えれば良いのだろうか?という話になる事もあります。そういう事を考えるという事は、学校で看護師が行っている業務は、そもそも「看護」の分野に入っている事なのだろうか?という、ぼんやりとした「引っかかり」が、看護師の中にもあるという事です。
しかし今回、この学術集会に参加した事により、学校で働く看護師も「小児看護」を実践している看護師の一員なんです!という今まで通りの捉えで「間違っていない!」と、今更ですが感じる事ができました。
医療的ケア児に関わる看護師は「学校」に対しては「段差」を感じている?
様々な場面で医療的ケア児に関わる看護師は、おそらく保護者さんが話している内容を受けて、医療的ケア児の生活に関係する機関の職員や他の施設等で働く看護師に対するイメージを作っている部分が多いのだろうと想像します。
同じ看護師なのに「こっちの看護師」と「あっちの看護師」ではやってくれる事が違う、など、同業者であるがゆえに比較したくなる保護者さんの思いは当然あると思います。
以前であれば、こういった学術集会で取り上げられていた医療的ケア児に関するテーマは、病院の看護師と在宅の看護師との接続をいかにスムーズに行うか、という内容のものが多かったように記憶しています。しかし、研究の成果もあり、もしかすると、病院から在宅への引き継ぎは、しだいにスムーズに行われるようになっていて、以前のような課題は解消されつつあるのかな?という印象を今回は持ちました。
今は、在宅の看護師から、学校の看護師や教員への接続に関する事に、課題と感じる部分がシフトしていて、時代とともに変化しているように感じます。
訪問看護や福祉事業所において、子ども達の生活を支える看護師の中には、「学校」との接続については、何らかの「段差」を感じているという事だと思いました。
もちろん、学校との「段差」や連携の「やりにくさ」については、具体的な内容はそれぞれに異なるとは思いますが、いずれにしても、「学校」というところは、ややマイナスなイメージで看護師には捉えられているように感じましたので、学校の看護師を支援する事を仕事にしている私としては、これは何とかならないのだろうか??ここを何とかしたい!!と思います。
看護師は「学校」の設置目的や組織、体制などは普通は知らないです…
最近は、医療的ケア児の生活を支えるための、関係機関との連携体制の構築というような話の中では、「学校」もちゃんと入る体制になっていると思います。更には「特別支援学校・小学校・中学校」というように校種の区別についても細かく表記されている資料も見た事があります。それくらい、医療的ケア児の退院後の在宅生活において、自宅での生活のその先には、当然「学校」もあって、「学校」も連携すべき機関である事が、看護師の中には普通に認識されてきたという事だと思います。
しかし、そういった看護師であっても、「学校」というところをキチンと理解している看護師は実は少ないのではないでしょうか?「学校」の設置目的や組織、校内体制などを知っている看護師はどれほどいるでしょうか?
当然の事ですが「学校」は文科省の所管で、運用する法律も医療機関や福祉施設とは異なります。私は、そういった事もこれからは、関係機関の方々に丁寧に説明をして、学校の役割とはどういうものなのかを、理解していただく事が必要ではないかな、と感じています。
まとめ
今回私は、学術集会に参加した事で、学校で働く看護師の役割や、看護師が学校で働くために必要な能力について、同業者である看護師に対して、しっかりと発信していく必要がある、と強く感じました。
学校で働いている看護師は増えてきていますが、今まさに学校で看護師として働いていても、学校教育についてや、学校の組織や役割についてキチンと知る機会がないまま、日々働いている看護師は多いと想像します。
今、学校で働いている看護師も、学校以外の場所で働いている看護師も、まずは、「学校について知る」というところから、学校に近づいていただくと、「段差」や「やりにくさ」を解消するためのヒントが見つかるのではないかな、と思います。
色々な立場の看護師が、先入観なくスムーズに学校に近づいてきてくれるよう、私は、出来るだけ、学校のしくみや、組織についてわかりやすく説明する機会を積極的に作っていきたい!と、今回、学術集会に参加をして強く感じました。