今回は特別支援学校で働くベテランのリーダー看護師さんから、リーダーとしての役割を果たすためのコツを伝授していただきました。
色々なお話を聞かせてくださいましたが、ポイントはやはり「学校は子どもが学ぶ場所」という軸がぶれない事だと感じました。
スタッフの看護師さん達とは今まで、学校で「看護師がすべき事」と「看護師がやらない方が良い事」を何度も話し合ってこられたそうです。
お互い意見を出し合い看護師をチームとしてまとめた上で、教員チームとの間に入って丁寧に調整しているというお話からは学ぶ事が沢山ありました💕
看護師がすべき事と看護師がやらない方が良い事
朝の特別支援学校の光景はおそらく各地で共通する部分は多いと思います。子ども達と朝の挨拶をしたり持参してきた荷物を受け取ったり、学校の玄関は賑やかな雰囲気です。
このリーダー看護師さんが勤務する特別支援学校でも医療的ケア児については、学習に必要な持ち物に加えてケアに必要な持ち物も持参して登校してきます。
その日の医療的ケアを実施するために必要な持ち物は全て揃っているか?登校の時点では健康観察と同時に持ち物の確認はとても大事です。
学校全体では健康観察はそれぞれの教室で担任が行っていましたが、医療的ケア児の健康観察は看護師がいるケアルームの中で担任が行う事になっていて、その様子を看護師は側で見守っていました。
そしてその日の担当看護師と担任とでダブルチェックをする感じで、医療的ケアの物品や酸素ボンベの残量などを確認し、保護者からのコメントやその日の予定などを共有してから、看護師の「いってらっしゃい~」の声を後ろに聞きつつ、担任と子ども達は速やかにそれぞれの教室に移動していきました。
医療的ケア児についても健康観察は担任主導で行っていて、看護師は見守っているところがスゴイなと思いました。
酸素ボンベを使用している児童は口唇色の確認も担任の声かけとともに自分で鏡を見て行っていました。「くちびるの色はどうですか?」と担任が児童に声をかけると「いつもと同じ。元気です」と担任に伝えています。そして看護師はそのやり取りを見守っています。
看護師主導での健康観察ではなく、看護師は見守りに徹しています。
これについてリーダー看護師さんのお考えを聞かせていただきました。
「看護師によっては看護師主導が良いという意見の人もいましたよ。でもそこは何度も話し合いました」「看護師がやるべき事ももちろんあるけれど、看護師がやらない方が良い事もあると思うよ、という話をしてきました。朝の健康観察は他の子も教室で担任と子どもとでやっているのだから、医ケア児も他の子と同じように担任がやった方が良いと思う。これは看護師主導でやらない方が良い事だと思うよ、という事を看護師同士で話してきました」
スタッフときちんと「話し合う」ようにする事で、看護師が「学校の看護師の役割」についての理解が進むようリーダーとしてスタッフを導いておられる様子が伺えました。
こういったリーダー看護師の存在は学校での看護師の役割について言葉だけではなく、感覚としてスタッフ看護師が捉えやすいようにスタッフ看護師のモデルになっておられる事が良くわかりました。
子ども達が担任の授業を受ける環境を作る
「今日はいつもより痰が多めだね…」と担任と看護師で相談をしている場面もありました。
臨時的な吸引の判断や授業を再開するかどうかの判断をどのようにしていくか?については学校毎にあるいは担任や看護師毎に微妙に異なる部分もあると思います。
これは学校現場では本当に難しい判断です。こういった微妙な判断についてリーダー看護師としての考えを聞かせていただきました。
「出来るだけ担任が授業が出来るようにするにはどうすればいいか?という視点で考えるようにしています」との事です。
今の授業があと何分で終わるか?この後の授業の内容は?など担任のプランを聞きながら、今どうするか?を判断するそうです。
様々な情報を整理し授業時間を意識した上で、担任と今共有した方が良い事と、共有は授業の後でも良い事などを瞬時に考え、授業の再開を最優先に検討するそうです。
「場面によっては、看護師が処置の方を優先させたくなったり、授業を中断したまま看護師から担任に説明を続けてしまったりする時もあります」
そういう時は「その話は授業の後でもいいね」とか「教室の外で話した方がいいね」とか、処置だけに集中しがちな看護師に「子どもは授業を受ける事が大事」という事が意識できるように助言をしているとの事でした。
まとめ
医療的ケア児にとって安心安全な教育環境を作る事を実現するには、微妙で難しい判断を教員と共有できる力が看護師には必要だという事が今回のリーダー看護師さんのお話を伺う中であらためて痛感しました。
教育環境が安心安全かどうかは、決して看護師だけで判断するものではなく授業をする教員とともに判断する事です。
それは前提として主治医からの指示内容が明確になっているという事や、校内の緊急時の連携体制が構築できているという、何段階も、あるいは何層もの準備がなされているという事があるから、教員と看護師はお互いの専門性を活かして、子ども達が授業を受ける、という共通の目的に向かって連携する事ができるのだと思います。
看護師と教員が組織の中で自分が果たすべき役割をそれぞれに理解し、日常的に専門職同士が対等に連携しあう事で医療的ケア児にとって安心安全な校内体制が成立します。そして看護師にとってはリーダー看護師がモデルとなる事で自分の役割についての理解が進むのだと思います。
今回お話を伺ったスゴイ✨リーダー看護師さんはまさにこの事を体現している方でした。今回お話を伺えた事は私にとってとても貴重な時間となりました。