今回も、特別支援学校で働くベテラン看護師さんと意見交換をする事ができました。この方は学校で長く看護師として子ども達のケアに当たってきた経験を経て、途中から、県内の他の学校からの相談にも対応するという業務を任命された「指導的な役割」を担当する方です。
以前も指導的な役割を担当している看護師さんの学校巡回に同行させていただいた時の事をブログで取り上げましたが、現状では、指導的な役割を担う看護師については、所属する組織から求められている役割や、他の看護師達との距離感、教員や学校管理職との連携方法などは、それぞれに異なっています。
今回意見交換をさせていただいた指導的な役割のベテラン看護師さんは、日々子ども達のケアに当たる看護師さん達への助言の仕方については、とても慎重に対応しておられました。学校組織における指導的な役割を担う看護師の立ち位置の難しさを感じた意見交換となりました。
「指導的な役割を担う看護師」と言っても上司と部下という関係ではないし…
「指導的な役割を担う看護師」の役割については、文科省が以下のように示しています。日々子ども達のケアに当たる看護師の役割に加えて、マネージメント機能の役割を果たす事が求められています。もちろん、その詳細な業務内容は、地域や学校によって異なっています。
この「指導的な役割を担う看護師」として任命されて活躍している方は全国各地におられます。しかし、その役割を任命されるまでの経緯や、雇用形態、その方の職位などは地域によって色々な状況です。
ザックリと大まかに分類すると、以下の3つのパターンになっているのではないかな、と思います。
①雇用形態あるいは、勤務条件を他の看護師とは分ける事で「指導的な役割」の業務が任命されるパターン(常勤雇用であったり、勤務時間が長いなど)
②それまでも勤務していたベテランの方に対して、雇用形態や勤務条件は継続した状態で「指導的な役割」の業務が任命されるパターン(リーダーとなっている実態に後付けで任命されるなど)
③外部組織から「指導的な役割」の看護師が派遣されているパターン
更に①のパターンについては、自治体によっては医療機関等での「看護管理業務の経験者」が担当している場合もあります。こういったところでは、日々子どものケアに当たる看護師と指導的な役割を担う看護師とは、組織の中では上司と部下という関係になっている場合もあります。
しかし、実際には多くの学校では、指導的な役割を担う看護師として任命されていても、その職位には反映されていない場合が多い印象です。つまり同僚という立ち位置なので「指導」ができる関係性ではないのが実態だと思います。上記の③の場合も同様かと思います。おそらく現実的には看護師に対しても、教員に対しても「指導」ではなく「アドバイス」の範囲だと思います。
以前にお話を聴かせていただいた指導的な役割を担う看護師さんも、今回意見交換をした看護師さんも、他の看護師さんや教員に対しては「アドバイス」の範囲で業務を担っておられました。日々のケアを行う看護師から何か相談や質問がある場合は、もちろん助言や説明をします。その場合はお互い良好な雰囲気でやり取りをする事ができます。しかし、相手からの相談はないけれど、看護師や教員の気になる行動や言動があった場合、その事について助言すべきかどうか?自分は上司の立場ではないし💦関係が崩れなだろうかと心配だし💦そもそも「指導的な役割の看護師」の立ち位置自体が難しいと感じる時があるよね……と、そのベテランの看護師さんと話しました。
学校組織の中での看護師の上司は誰?
「指導」という言葉に縛られてしまうと、指導的な役割の看護師と言っても「上司じゃないのに……」という事になってしまいます。「上司と部下」という事で整理すると、学校組織の中での看護師にとっての上司は誰なのか?それは、多くの学校では、その組織体制においては校長や教頭などの管理職や、あるいは主任的な業務を担当する教員が位置付いていると思います。
では同業者として看護師に対して「指導」ができる立場の人はいないの?という事になります。それについては看護師の上司に当たる人が必要に応じて「指導的な役割の看護師」の意見も参考にしながら、部下である看護師を指導するかどうかを判断する、というのが、建て前的な表現にはなりますが、現状での組織上での流れになると思います。
このような医療機関とは異なる学校特有の組織体制の特徴が、場合によっては、看護師チームが組織として成長し成熟していく事にブレーキをかけてしまっている部分もあるのではないかなと思います。
学校で働く看護師集団が組織として成熟してゆくには?
過去にも、学校組織においては、常勤職員の看護師が「指導的な役割」を担当し、非常勤職員が日々のケアを当たるという、雇用形態の違いで役割を分けた運用をしている学校の看護師さんと意見交換をした事をFacebook等に掲載しました。
看護師全員が「今の課題を改善しよう!」という共通のミッションに向かって「看護師チーム」として、看護師同士で役割を分けて取り組んでいく、という捉え方にする事で、看護師チームを組織として成長させ成熟させる事ができている学校もあります。
その学校は、学校での勤務経験年数の長短や、年齢の違いなど、当然、看護師個々の状態に違いはありつつも、看護師全員が向かうべき方向が同じである事を色々な場面で看護師同士が互いに確認し合っていました。場合によっては「センパイ看護師」がアドバイスをしたり、お互いに疑問を出し合ったりしながら、上司や部下という関係性にこだわらなくても、互いの役割の違いを活かすことができている、まとまりのあるチームとして、学校内の組織にキチンと位置付いて仕事をしている、という印象でした。
まとめ
全国の学校や自治体では「指導的な役割を担う看護師」が様々な形で活躍をしています。しかし、その役割を担う人材を育成する研修プログラムや認定講習会などは未だありません。それぞれの自治体や学校の中で、その立ち位置を模索しながら、組織から期待されている役割にどうすれば答えられるのか?皆さんそれぞれで工夫をしながら日々のお仕事に取り組んでおられます。
将来的には、この全国で活躍する「指導的な役割を担う看護師」の皆さんが集合して、意見交換をする会が開催されたらいいな❣️と思っています。きっと、様々な課題の中にも、素晴らしいアイデアや、知見を共有できるスゴイ機会をなるのではないかなと思います。
本当に実現できている未来に期待します!
2022年7月8日のブログ「【指導的な役割を担う看護師】に求められる役割は?」👉https://nurse-fight.com/nurse-shidou2/