東京都は訪問看護ステーションでの医療的ケア児の受け入れが進む事を目的として「医療的ケア児訪問看護ステーション体制整備事業」を昨年度より実施しています。
今年度は私も医療法人はるたか会の職員のひとりとして学校の看護師について説明をさせていただきました。
医療的ケア児の受け入れを検討している訪問看護ステーションの事業所に対して東京都が準備の段階からサポートするという事業です。
成人や高齢者を対象としている事業所の方々が今後医療的ケア児を受け入れるに当たって必要となる小児看護の知識や演習等が受けられるプログラムとなっていて、私は最終日の講義の1コマを担当しました。
看護の対象が小児であるということ
この東京都の事業は医療的ケア児を受け入れた経験がない(経験が少ない)事業所が受講対象となっています。
そして、最終日まで参加すると医療的ケア児の受け入れに必要な経費の補助も受ける事ができるそうです。
受講者の皆さんは既に訪問看護は実践しておられますが、小児と成人の看護が違う事はわかっておられるので、皆さんにとっては新しい情報や初めて経験する演習もあると思います。
例えば、日常的に訪問看護師が使う血圧計のマンシェット(上腕部に巻き付ける袋状の細長い布)のサイズや、パルスオキシメーターのプローブ(酸素飽和度や脈拍数を計測するセンサー)のサイズも小児と成人とは異なります。
医療保険の制度や自治体の相談体制も成人や高齢者と小児では色々異なります。
3日間のプログラムの中では医療法人財団はるたか会の訪問看護ステーションの看護師や東京都医療的ケア児支援センターの看護師より事例を使った具体的な説明もありました。
人口が多い東京都にとっては医療的ケア児を受け入れることができる訪問看護ステーションの事業所を増やしていく事は喫緊のミッションだと思います。
受講者の皆さんは熱心にメモを取っておられ意欲的に参加をしておられました。
訪問看護ステーションが学校と連携するには
「学校と訪問看護ステーションとの連携」についての講義が私の担当でした。
私は以前から「学校の中の事は外からではわかりにくい…」と学校の外の看護師に言われる事が気になっていたので、まずは学校の看護師の事を知っていただきたいと考え、学校組織の中で看護師がどういった立ち位置で働いているのか、看護師は学校でどんな役割を担っているのか、訪問看護の目的と学校での看護の目的の違いは何か、といった事を説明させていただきました。
また、訪問看護ステーション側から学校や保育所等への情報提供ができる制度として「訪問看護情報提供療養費2」という報酬が算定される制度がある事も紹介させていただきました。
さらに、配慮や支援が必要な子ども達への支援が切れ目なく一貫性のあるものなるよう「就学支援シート」「学校生活支援シート」「個別移行支援計画」といった連携ツールが東京都では活用されている事も紹介させていただきました。
こういった連携のためのツールがあるという情報を知っておく事はとても大事だと思います。
学校との連携については、東京都が発信している情報や都内の市区町村の情報を収集をしておくとともに、できれば紙やデータのやり取りだけでなく実際に「顔の見える関係」になる事も大事だと思います、という私の考えも合わせてお話しさせていただきました。
まとめ
「連携」という言葉は言うのは簡単ですが「本当に連携する」のは容易ではありません。
学校は日常的に学校外の様々な関係機関とは連携していますが、医療的ケア児の学校生活について訪問看護ステーションと学校が「本当に連携する」のは色々工夫が必要です。
私は「相手の事を知る」事も連携の工夫のひとつだと思っています。
これは「双方」に言える事です。
訪問看護ステーションの方々には、学校の中の事を知っていただき、そして学校の教員や看護師も、訪問看護の事を知る、というお互いの事を知り合う事が大事だと思います。
相手から期待する反応や返答が得られない💦という感じの時は、何故そうなるのか?相手の状況に立って考えてみる事で、何等かの連携の糸口が見いだせる場合もあると思います。
今回私からは最後に、もし学齢期の医療的ケア児を訪問看護として担当される場合は、まずは「学校生活」に関心を持っていただき、学校の中の事を知りたいと思ってください、とお話しをさせていただきました。
東京都医療的ケア児訪問看護ステーション体制整備事業👉https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shougai/nichijo/s_shien/ikeaji-stationseibi.html
東京都教育委員会「学校生活支援シート」(個別の教育支援計画)👉https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/document/special_needs_education/current_plan.html
訪問看護情報提供療養費2(カイポケ訪問看護マガジンのサイトより)👉https://houkan.kaipoke.biz/magazine/receipt/information-offer.html